介護しやすい間取りとは?何に対して、介護が必要なのかという事を掘り下げて、ヒアリングし設計していきますが、足が悪くなったら、車いすが必要になったらという事を気にされているのではないでしょうか?建築だけではないですが、誰が使っても使いやすいというユニバーサルデザインの考え方が、あります。介護しやすいというのは、何か体に障害があっても自分で動ける範囲や、出来る事が多い間取りになろうかと思います。平屋は、階段という障壁が無いので、お勧めできます。
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介護しやすい平屋の設計ポイント
介護しやすい平屋には、いくつかの設計ポイントがあります。
①平屋の最大の利点は階段がない、移動がとても楽であるという点です。特に高齢者や身体に障害がある方には、安全で快適な住まいを提供する上で大切な要素です。この点を考慮して、すべての部屋を一階に配置したのが平屋です。
②間取りの広さや動線。広めの廊下やドアは、車椅子や歩行器を使用する方にとって特に便利です。動線をシンプルに保つことで、日常生活における不便やストレスを軽減できます。
③バリアフリー設計を採用することも重要です。手すりの設置や段差の解消は、転倒防止に繋がります。さらに、滑りにくい床材を選ぶことで、事故のリスクを最小限に抑えることができます。
④自然光を取り入れられる設計も心を豊かにします。明るい空間は、気分を快適に保ち、精神的な安定感を促す要素となります。
動線を分かりやすくする
動線を分かりやすくすることは大切です。動線には、障害は無い方が良いです。段差はもちろんですが、ドアもない方が良いと思います。
ドアをつける理由は、見られたくない物や見たくない所を隠すというのが、メインです。寒いとか暑いとかは、高気密高断熱の家では、さほど考えなくても良いかと思います。他には音や匂いの問題があります。これは、ドアをつければいくらかは改善します。ただ、介護となると、余計に玄関からリビングのドアとかは、無い方が良いのではないかなと思います。
バリアフリー設計の重要性
バリアフリー設計の重要性は、特に高齢者や身体に障害を持つ方にとって非常に大きいものです。住環境が彼らの生活に与える影響は計り知れません。バリアフリーとは、障害物を排除し、誰もが快適に、そして安全に生活できる空間を作ることを指します。
まず、バリアフリー設計がもたらす最大の利点は、転倒事故のリスクを軽減することです。高齢者の場合、転倒による怪我は深刻な健康問題につながることがあります。例えば、トイレや浴室へのアクセスを考慮し、手すりを設置したり、段差をなくしたりすることで、移動が楽になります。このような小さな配慮が、事故を未然に防ぐ要因となるのです。
さらに、バリアフリーの住環境は、介護を受ける方だけでなく、介護を行う家族にとっても大きな助けになります。介護者が物理的な負担を軽減できることで、心の余裕を持ちながらサポートを行うことが可能になります。こうした安心感は、全ての家族にとって重要な要素です。
具体的には、広めの廊下やドア、滑りにくい床材の選定、そして明るい照明を取り入れるなど、バリアフリー設計は多岐にわたります。これにより、便利で快適な住空間が実現します。
適切な部屋の配置
適切な部屋の配置は、介護しやすい平屋の設計において非常に重要な要素です。特に、高齢者や身体に障害を持つ方が快適に生活できるように配慮した間取りが求められます。
まず考慮すべきは、主に使用する部屋の配置です。居間、寝室、トイレ、そして浴室は、なるべく近い場所に配置することが大切です。これにより、移動の時間や労力を最小限に抑えることができ、高齢者が日常生活をスムーズに送ることが可能になります。
次に、部屋の広さと動線にも注意が必要です。特に廊下は十分な幅を持たせ、車椅子や歩行器が通りやすい設計にしましょう。扉の開き方や位置も検討し、障害物がない明瞭な動線を維持することが、安心・安全な居住空間を実現します。
また、トイレや浴室は、特に高齢者にとって重要なポイントです。頻繁に利用するため、容易にアクセスできる位置に設定することが望ましいです。さらに、トイレには手すりを設けるなど、安全性を高める工夫も欠かせません。
介護しやすい間取りの具体例
介護しやすい間取りの具体例として、まずはオープンなリビングダイニングを考えてみましょう。広々としたこの空間は、家族が集まる場所であると同時に、介護が必要な方にとっても安全な移動がしやすいです。家具の配置も工夫し、動線を確保することが大切です。
次に、寝室やトイレの配置について考えます。寝室は、できるだけ居間から近い位置に設けることで、夜間の移動が容易になります。また、トイレも同様に、近接させることで負担を軽減できます。トイレには手すりを設置し、入室しやすい広さを持たせることで、安心して使用できる環境を整えましょう。
さらに、浴室においても工夫が必要です。滑りにくい床材や、入口の段差をなくすことにより、安全性を高めます。
1LDK:楽しく過ごす平屋
まだ、元気なお施主様が、介護ばかりに気を使った間取りはなかなかむづかしいです。このお客様は60代で一人で暮らす家を建てました。お子様やお孫さんが遊びに来ることを想定しながら建てました。絵画や音楽鑑賞など多趣味なお客様で、家具などにも統一感を持ち、介護のしやすい間取りをそこまで意識はしてませんが、デザインも良いですが、足が悪くなったとしても、活動範囲の広く取れた、良い間取りだと思います。楽しく過ごすことで、健康寿命が延びてくれると嬉しいです。
玄関からリビングに入る建具のない広めの入り口です。床から天井に伸びるポールは手摺で、靴の脱ぎ掃きがしやすい設計です。身長によってどこでもつかめるので、誰が使っても使いやすいユニバーサルデザインの考え方の手摺ですね。
キツネのぬいぐるみが可愛いですね。この寝室の入り口も1.2m程あります。1間間口の収納を取りたくなるのですが、洋服の量をそこまで増やすつもりはないと、割り切って頂き、車いすでも通れる幅を確保できています。建具をなくすことで、スムーズでストレスの少ない生活が送れます。
ホテルライクな水廻りが欲しいとのご要望でしたが、結果的に介護スペースが広く取れています。トイレ洗面脱衣、洗濯スペースが同じ空間になっています。
2LDK:中庭を取り入れた平屋
こちらの間取りも介護しやすい間取りになっています。キッチンの右側が中庭となっており、帰ってきて中庭を眺めながら各部屋に行く動線を取った結果、そこが車いすも通りやすい経路になっています。中庭が四季を感じられ、居心地も良いです。
広々としたリビングです。勾配天井が、より開放的に、たたみのエリアも奥行きを感じます。
中庭を、介して奥の部屋に入るので、窓から見える中庭を作る楽しみと、木や草花から四季を感じられます。
3LDK:家族で暮らしやすい平屋
お客様に寄り添った大好きな間取りです。フルフラットの家です。お部屋も家族で過ごす場所を広く取れています。主寝室や右側の洋室はコンパクトになってますね。真ん中の洋室は、ベットや車いすでいても、広く開く引戸でLDKにいる家族とつながり、一人ぼっちになりません。また、南側は大きな窓で明るい自然光が入り心地よいです。
スロープです。広い敷地で、十分に距離を取り、緩やかなスロープを作っています。カーポートの屋根もかかってますので、家に入るまで、多少モタモタしても、濡れずに移動できます。カーポートはだいたいの家では個人的に要らないと考えていますが、このカーポートはしっかり役割があり、なくてはならないと思います。
3枚引戸でLDKと洋室がつながります。小上がりの畳も良いですね。どこにいてもなんとなく家族の気配が感じられて、良いです。
大きな窓で、陽だまりが出来、明るいお家です。
費用を抑えて平屋を建てるためのポイント
費用を抑えて平屋を建てたいですね。住宅を建てるための資金は?ローン?補助金は?家だけ外構やカーポートは?色々考える事はありますね。
少しご紹介いたします。
補助金や税制優遇の活用方法
平屋を建てる際に、補助金や税制優遇を活用することは、費用を抑える非常に効果的な方法です。まず、地方自治体や国が提供する住宅関連の補助金制度に注目しましょう。特に、バリアフリー改修や省エネルギー性能の向上に対する補助金が用意されています。これらの制度は、介護を考慮した住まいの改築や新築に役立つ資金となりますので、ぜひ調査を行ってみてください。
次に、住宅ローン減税の利用も考慮に入れるべきです。住宅を新築する際に適用されるこの制度は、毎年の所得税から一定額を控除することが可能です。これにより、長期的に見た場合の負担を軽減することができます。特に住宅の性能によって控除額が変わるため、高気密・高断熱の住まいを選ぶことにより、より高い優遇を受けられる可能性があります。
予算内で実現するための工夫
予算内で平屋を実現するためには、いくつかの工夫が必要です。まず大切なのは、事前の計画をしっかりと立てることです。建物に何を求めるのか、具体的なイメージを持つことで、必要な費用を大まかに把握することができます。また、たくさんの要望を詰め込みすぎないようにし、本当に必要な要素に焦点を合わせることが重要です。例えば、収納スペースや部屋の広さなど、優先順位をつけることで、無駄なコストを抑えることができます。
次に、住宅ローンや補助金の活用を検討することもおすすめです。地方自治体や国が提供する住宅支援制度を利用することで、初期投資を抑えることができます。また、金利が低い時期にローンを組むことで、将来の支払い負担を軽減することも可能です。
さらに、建材選びも重要なポイントです。高価な素材を避けつつ、耐久性や品質を考慮した合理的な選択をすることで、長期的なメンテナンスコストも抑えることができます。例えば、断熱材や省エネ設備は高初期投資がかかりますが、長い目で見た場合の光熱費削減を考慮すると、結果的に経済的になります。
介護しやすい平屋の設計注意点
介護しやすい平屋の設計には、いくつかの重要な注意点があります。まず、バリアフリーの導入は必須です。段差をなくし、スロープを設けることで、車椅子や歩行器の使用が快適になります。また、廊下や通路幅を広く設定することも大切です。最低でも90センチ以上の幅を確保することで、スムーズな移動が可能になります。
スロープに関しては、特に注意が必要です。勾配については、建築基準法で1/8以下、バリアフリー法で1/12以下という基準がありますが、車椅子を自走する場合は1/15以下の緩い勾配が理想的です。カスケホームの場合、地面から床の高さはおおよそ58cmです。それをもとにシミュレーションを行ってみましょう。
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1/8以下: 58×8=4.64m
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1/12以下: 58×12=6.96m
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1/15以下: 58×15=8.70m
広い土地なら問題なく取れますが、狭い土地では難しいこともあります。リフトを導入する選択肢もあるので、その点も検討してみてください。
次に、間取りの配置についても考慮が必要です。介護者の生活スペースをなるべくコンパクトにまとめると合理的ですね。ずっと住む家なので合理的なだけでは、寂しいとも思うのでバランスをとって設計したいです。
最後に、収納スペースの工夫も忘れてはいけません。必要な物が手の届く範囲に整理されていることで、日常生活の利便性が向上し、介護者の負担も軽減されます。
採光と換気に配慮する
介護に適した平屋の設計には、採光と換気に配慮することが非常に重要です。自然光を取り入れることで、室内の明るさや温かみが増し、住環境の快適さを向上させることができます。特に、高齢者にとって、日光は心身の健康に良い影響を及ぼします。日中の活動を促し、気分を明るく保つためにも、採光を工夫することが必要です。
平屋の特性を生かし、リビングやダイニングには大きな窓を設けることをお勧めします。窓の配置によっては、屋外の景色を楽しむこともでき、生活の質を向上させる要因となります。また、光の入る時間帯に応じて、照明計画を立てることで、効果的に室内を明るく保つことが可能です。窓は、障害物によって光が遮られない位置に設置することが成功のカギとなります。
換気も同様に重要です。特に長時間家にいる高齢者にとって、空気の質は健康に直結します。定期的に新鮮な空気を取り入れることで、カビや菌の発生を防ぎ、快適な室内環境を維持することができます。窓を開けやすい設計や、エコで高性能な換気システムを導入することをお勧めします。
緊急時の対応を考慮した設計
緊急時の対応を考慮した設計は、介護を考えるうえで大切な要素ですが、介護に特化しすぎない柔軟な設計が求められます。高齢者や介護が必要な方が安心して過ごせる環境を整えることは重要ですが、それと同時に、家族全員が快適に生活できるような間取りも大切です。例えば、居室や水回りの配置を工夫することで、急な事態にも迅速に対応できる環境が作れますが、特定の介護を想定するだけでなく、日常的に使いやすい設計を意識することも重要です。
また、移動がスムーズに行えるように、障害物を取り除いた設計が基本ですが、広めの通路や廊下を確保することも、どんな状況でも快適に過ごせる環境を作るためには必要です。収納スペースは使いやすい位置に設け、物を取りやすく配置することで、誰にとっても便利な設計にすることができます。
緊急時の連絡手段も大切ですが、生活全般において使いやすさを重視した設計が求められます。電話やインターホンの設置位置を工夫し、緊急連絡先は家族で共有出来た方が良いです。
設備の安全性と使いやすさ
設備の安全性と使いやすさは、誰もが快適に過ごすための基本です。特に高齢者や身体に不安のある方々にとって、日常生活での安全性を確保することは非常に重要ですが、それは介護が必要な方々だけに限りません。家族全員が快適に過ごせる空間を作るために、まずは浴室やトイレなどの水回りで、滑りにくい素材を使用し、床のデザインにも注意を払いましょう。また、手すりを設置することで、立ち上がりや移動がしやすくなり、年齢や体力に関係なく、安心して使える環境を作ることができます。
さらに、キッチンやリビングエリアでも使いやすさを考慮することが大切です。調理器具や食器類は、使用頻度に応じて手の届きやすい場所に配置し、シンクの高さやカウンターの位置も座ったままで作業しやすいデザインにすることで、家事全般が楽になります。このような工夫は、介護の有無に関わらず、家族全員の負担を軽減し、日々の生活がスムーズになります。
これらの設備を考慮した平屋の設計は、使いやすさを向上させると同時に、家族全員が長く快適に過ごせる住まいを提供します。
まとめ
介護しやすい間取りを作る目的は何なのでしょう。介護しやすい間取りではなく、介護されなくても出来る事が多い家が良いです。私も父が歩けなくなり、介護の経験がありますが、大人は重いです。父は腕の力が使えたので、掴めるものを掴んでどうにかこうにか、お風呂に入れたりしました。疾患により全然違います。トイレも広い方が、介助しやすいとか言いますが、腕の力がある人なら、広くて壁が遠いとその力が使えないとなります。父は、よちよち歩きは出来る日があって、ただ父が思ってるより足が前に運ばないという感じでした。そうすると上半身だけつんのめり、トイレでこけそうになった事があります。実家のトイレは普通の一畳サイズだったので壁を腕で突っ張り耐える事が出来ました。もちろん、広ければ介助しやすいのではと思ったこともありますが、「介護だからこのトイレの広さが必要だ」とひとくくりに言えないのが実情です。それと父の介護も限られた2日程の事なので出来ましたが、このレベルになると、24時間ずっと出来る人は少ないと思います。
実体験も踏まえ、色々考えると介護が必要になっても、長く住める家は、介護されなくても出来る事の可能性を上げていく間取りを書くことだと思います。その意味で平屋は良い選択肢だと思います。平屋は誰が使っても使いやすいユニバーサルデザインですね。
身近なユニバーサルデザインを探してみると面白いですよ。ホッチキスやハサミなどの文房具などにもあります。ユニバーサルデザインのマークがついています。気づかず使ってることもありますが、意識して使うと少しの力で出来るなとか、手が小さい子供でも使いやすそうとか、色々気づいて面白いです。
建築でも、わりとありますよ。気づかず真似して、たまたまそうなってる場合もありますが、意識して真似出来ると必要な人や場所に設置できるので良いですね。